図書室の現状に、移動図書館車のさらなる可能性を見た!現地小学校訪問レポート

図書室の現状に、移動図書館車のさらなる可能性を見た!現地小学校訪問レポート

南アフリカのSAPESIスタッフから届いた現地レポートをお届けします。

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南アフリカには約12,000の小学校がありますが、図書室が存在するのはそのうちの約3,000校足らず。つまり、図書室がある小学校は3割にも満たないのが現状です。また、南アフリカの小学校は3年生までの授業は母語ですが、4年生になると全ての授業が英語で行われるようになります。南アフリカの子どもたちの低学力問題にはそういった背景があり、これを解決するひとつの方法として、Sapesiは日本の自治体から移動図書館車を南アフリカに寄贈してもらい、その車に本(主に英語で書かれたもの)を載せて現地の小学校を回り、子どもたちに読書の楽しさを感じてもらい、学力向上につなげていくプロジェクトを行っています。

2018年911日(火)ヨハネスブルグの中心地から車で30分ほどのところにある、Benoniというタウンシップ周辺で約30校を定期巡回する移動図書館車に乗り、小学校2校を訪問してきましたので、今回はその時の模様をレポートします。

1校は普通学級と特殊学級がある普通規模の職業訓練校、もう1校は1,000人以上の子どもたちが通う昨年新設されたピカピカのマンモス校です。

学校訪問の前に、まずはバスベースがある小学校へ。

この方は、このエリアの図書館車の運用をしてくださっているNPOEkfundzeni」のKathy。彼女が寄贈された本と図書館車の管理を行っています。バスベースにはたくさんの本!ほとんどが世界中から寄贈された本です。

ズールー語で書かれたブルーナの本も。

図書館車に乗り、1つ目の小学校に向かいます。移動図書館車には、たくさんの本がぎっしり。最大6,000冊もの本が搭載可能です。

1校目は職業訓練など実践的な授業が特徴的な小学校。発達障害を持つ子どもたちが学ぶ学級もあり、ここ数年でのタウンシップの小学校の発展が見て取れます。車や本棚など雑貨の組み立て、ヘアメイク、ジェルネイルの授業など、即社会に出て活躍できそうな実践的な授業が印象的でした。(余談ですが、バイオジェルは南アフリカで生まれたんですよね)

2校目は、2017年に新設された小学校に。1クラスが60人、全校生徒が1,000人以上にのぼるマンモス校です。

食堂はこの賑わい。

こちらの学校は昨年できたばかりの新設校ということもあり「図書室」という部屋は存在するのですが、この有様、全くと言ってよいほど運用されていません。前述の通り、約3割の小学校には図書室がありますが、たとえ図書室があったとしても、このようにきちんと機能していないところも少なからずあるというのが現状です。こうした背景もあり、子どもたちの低学力は根が深い問題です。図書室がきちんと運用されない原因として、先生側に「子どもたちに本を読ませることが教育として重要」という認識が不足しているという問題が挙げられますが、その意識を変えていくことも本プロジェクトの役割のひとつと考えています。

図書室が閑散としている一方、小学校にやってくる移動図書館車はたくさんの子どもたちで賑わっています。色とりどりにペイントされた図書館車、きれいに整然と並んでいる本、楽しそうな雰囲気に「何だろう?」と思って、子どもたちが集まってくるようなディスプレイが工夫のひとつ。また、移動図書館車は司書の同乗必須で運行していますが、集まってきた子どもたちに対して本をよく知る司書が話をすることで、子どもたちは興味喚起され本を借りていくという良いサイクルが回っています。また、司書とのコミュニケーションによって生徒だけでなく先生の本への理解が深まり、読書の重要性を知りモチベートされるという側面もあり、好循環ができている理由のひとつとも言えます。

小学校の壁にはエイズ撲滅のためのイラスト+メッセージが書かれていたり、移動図書館車に搭載されている本にも『child living with HIV』というタイトルのものがあったり、日本で一般常識として習うのとは異なり、エイズが身近で大きな社会問題であることが分かります。Sapesiは、移動図書館車プロジェクトを通じて、子どもたちの学力向上のみでなく、こうした社会問題への解決の一歩になればと考えています。